今年で20年目を迎える本講座は「ギリシャ神話」にはじまり西欧文化の流れをたどって、いったん20世紀に達しましたが、そこで受講生からの要望に応えて過去にもどり、10年前からキリスト教とヨーロッパの関係について学んでいます。キリストが生まれたのは中東のパレスティナ地方ですが、キリスト教は、そこを支配していたローマ帝国とやがてそこに侵入してヨーロッパという新たな文明を築く諸民族によって世界的規模に広がり、人類共通の普遍的宗教となりました。本講座はこの「ローマ帝国のキリスト教化」の検討をすでに終え、5年前から「ヨーロッパの成立とキリスト教」の問題にはいっています。 昨年度は西欧文化の土台となる中世カトリック思想成立の過程を「カトリックと正教」「エルサレム」「マリア信仰」「悪魔」「巡礼と修道会」「煉獄」といった項目にわけ、中世ヨーロッパの人間がどんなことを信じて生きたかを探りました。 本年度は、社会集団としてのキリスト教が直面した問題に焦点を合わせ、春・夏期には「中世の社会構造とキリスト教」秋期には「イスラームとの出会い」冬期には「ユダヤ人との共存」を中心に、東方教会や各民族間の比較をまじえ、現代とも関連付けながら、考察したいと考えています。第1回講座の題目は「祈る人、戦う人、働く人」です。 これまでの経過をご存じなくとも、興味のある方はぜひご参加ください。テキストは用いず毎回要点をプリントしてお配りします。必要に応じてビデオ等の映像を鑑賞します。(講師・記) ※11月15日はカトリック司祭・並木豊勝先生をお迎えし、特別講義「聖書の成り立ち」を行います。
中島 公子:元明治大学教授 早稲田大学大学院博士課程修了。文学修士。専攻はフランス文学。早稲田大学等講師を経て明治大学農学部教授。フランス語および一般教育「文芸思潮」担当。2003年退職。著書:『お話文芸思潮』青山社。『文芸人間学の試み』近代文藝社。『My Lost Childhood』(短編小説集)近代文藝社。訳書:『キリスト教思想』白水社クセジュ文庫。F.モーリヤック『蝮のからみあい』『海への道』春秋社、他多数。
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