今日、アジアのみならず、欧米にまで広がる仏教は、インドで始まった。それでは、誕生の地、インドの仏教とはどのようなものだったのか?近代の仏教研究が始まって約二百年、この問いに対する答えは、インドで仏教の伝統が途絶え、多くの仏典が失われたという事実に阻まれてきた。しかしながら、今世紀のインド仏教研究は、1990年代のガンダーラ語写本の発見や漢訳仏典や碑文の言語研究により、歴史研究と研究方法との両面で刷新され、これまでよく見えていなかったインド仏教の姿が判明しつつある。前世紀の先行研究を批判的に検討しながら、「初期仏教」研究と「大乗仏教」研究における最前線を示したい。(講師・記)
馬場 紀寿:ばば・のりひさ 東京大学教授 1973年青森県生まれ。2006年、東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。博士(文学)。専門は、古代インド仏教および上座部仏教の思想と歴史。2009年南アジア学会賞、2011年日本印度学仏教学会賞、2016年パーリ学仏教文化学会賞(学術賞)、2017年東方学会賞(東方学会)を受賞。現在、東京大学准教授(東洋文化研究所)。著作:『上座部仏教の思想形成――ブッ ダからブッダゴーサへ』(春秋社、日本南アジア学会賞、日本学術振興会賞)、『初期仏教 ブッダの思想をたどる』(岩波新書)、『仏教の正統と異端 パーリ・コスモポリスの成立』(東京大学出版会)、"Buddhaghosa"(Oxford Research Encyclopedias, Religion)他 論文多数。
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