『源氏物語』は、その成立以後、各時代で様々な検討が加えられながら、現代まで脈々と読み継がれてきました。 現代の解釈においても、過去の人々の解釈に基づく部分が少なからず存在します。そういった過去の解釈は、多くは古注釈書から把握することができます。 古注釈書に見られる注釈内容は、現代の我々とは異なる方法や価値観によって施されているため、一見すると全く意味の分からないものも多く存在します。 しかし、難しく捉える必要はありません。 過去の人々がどのような点に注目していたのかを丁寧に汲み取れば、彼らの意図は見えてきます。 本講義では、『源氏物語』の注釈史の入門編として、注釈のあり方や、各時代を代表する注釈書を取り上げながら、各時代の人々が『源氏物語』をどのように扱ってきたのかという点に迫ってみたいと思います。(講師・記) <カリキュラム> 【7月期】 第1回 『源氏物語』の享受と注釈書 第2回 注釈とは何か、注釈書とは何か 第3回 古注釈書の見方 【10月期】 第4回 現存最古の注釈書 ―藤原伊行『源氏釈』― 第5回 伝本の書写と注釈 ―藤原定家『奥入』― 第6回 家としての学問 ―源光行・親行『水源抄』、素寂『紫明抄』― 【1月期】 第7回 博引旁証のかたまり ―四辻善成『河海抄』― 第8回 最も現代的な感覚の注釈書 ―一条兼良『花鳥余情』― 第9回 室町期の注釈の基盤について ―『河海抄』と『花鳥余情』の関係― 【4月期】 第10回 三条西家と連歌師の活動 ―三条西実隆『細流抄』など― 第11回 室町期までの集大成 ―中院通勝『岷江入楚』― 第12回 江戸期の最強の流布本 ―北村季吟『湖月抄』―
松本 大:まつもと・おおき 関西大学文学部教授。博士(文学)。埼玉県出身。専門は、平安文学作品の享受史研究であり、特に室町期の『源氏物語』注釈書・享受資料を対象とする。注釈書などに見られる各時代の文学享受のあり方に注目し、古典文学作品の新たな理解の方法を探っている。著書に、『源氏物語古注釈書の研究―『河海抄』を中心とした中世源氏学の諸相―』(和泉書院、2018年)、『源氏物語を読むための25章』(河添房江氏との共編著。武蔵野書院、2023年)などがある。また、第7回中古文学会賞(2014年)、第12回日本古典文学学術賞(2019年)などを受賞している。
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