柳田國男の民俗学は歴史の中に「変遷」と「伝承」、そして「原因」と「結果」の動態を読み取ろうとした学問でした。現在の日本が直面している国民の生活不安、政治経済外交の危機、それらはすべて歴史の中に原因があります。しかし多くの日本人はそれを深く考えず、不都合な事件もすぐに忘れてしまいがちです。柳田國男は日本の敗戦という廃墟の中で『先祖の話』を書き、学問こそが世の中をよくしていく力だとのべていました。それに学びながら、稲作の定着から律令制下の税制へ、古代後半から中世の武士による年貢徴収とあいつぐ戦乱、幕府絶対の近世の強権社会の到来の中で醸成された集団的思考と行動、誰も責任を採らない傍観と評論、自立と自律ができにくい日本人になってしまったことを、古代史から現代史にいたる通史的な視野の中で分析し、批判や悲観だけではなく、どうすれば日本人の有力な点にも注目し、自信をもって危機から回復し改良していけるか、民俗伝承学の視点から考えてみます。(講師・記) <7月期のスケジュール> D律令制から荘園公領制へ―院政が武家政権を生んだ E武家政権が起こした社会変化―日本を変えた平清盛 F武士の宿命―戦略と戦勝:殺し合いは当たり前 <10月期以降のスケジュール>※予定・変更になる場合がございます G日本文化と日本人―信仰・思想・芸能 H開国と欧米化―立憲国家と天皇大権 I帝国陸海軍と産業革命―外見の強力性と内実の脆弱性 J科学する精神―自然科学と人権思想 K敗戦と和製「民主主義」―民主主義と衆愚政治 L経済発展と失われた危機管理能力―IT時代を開いたアメリカ社会 M政治家と高級官僚―「よい・わるい・ふつう」の人材枠の中で
新谷 尚紀:しんたに・たかのり 国立歴史民俗博物館名誉教授・国立総合研究大学院大学名誉教授 1948年広島生まれ。早稲田大学大学院文学研究科史学(日本史)専攻博士課程修了。博士(社会学)。専門は日本民俗学。国立歴史民俗博物館教授・國學院大学教授を経て、現在、国立歴史民俗博物館名誉教授・国立総合研究大学院大学名誉教授。著書に『神々の原像−祭祀の小宇宙−』『お葬式−死と慰霊の日本史−』『柳田民俗学の継承と発展−その視点と方法−』吉川弘文館 、『伊勢神宮と出雲大社−「日本」と「天皇」の誕生−』『伊勢神宮と三種の神器−古代日本の祭祀と天皇』『氏神さまと鎮守さま』(講談社選書メチエ)、『神社の起源と歴史』吉川弘文館ほか多数。
テキストとして「すぐ忘れる日本人の精神構造史」(さくら舎・税別1800円)を使用します。各自書店でお求めの上、ご持参ください。
Zoomウェビナーを使用した、教室でもオンラインでも受講できる自由選択講座です(講師は教室)。見逃し配信(1週間限定)はマイページにアップします。各自ご確認ください。お問合せはasaculonline001@asahiculture.comで承ります。