社会学・哲学・宗教・歴史・文化など幅広い対象に鋭く切り込む著作を発表する講師。現代社会をいかに論じるべきか、自身の関心のありかを語ります。 〈今回のテーマ〉 小川哲さんの小説『君のクイズ』は、主人公の「僕」のライバルのクイズ・プレイヤー本庄絆が、出題を聞く前に正解を出し、Q-1グランプリに優勝する、という衝撃的なシーンから始まります。どうして本庄は、問題のイントロ部分さえ聞かずに、正しい回答を得ることができたのか。『君のクイズ』は、この謎を解く良質なミステリーです。 ところで、このミステリーが、現代日本の顕著な特徴となっている、ある社会問題(というか社会現象)を説明するための鍵となるのです。社会問題とは、次のことです。政治学者のエリカ・チェノウェスによると、21世紀に入ってから、全世界的なレベルで、市民的抵抗(現状の打破をめざす非暴力の政治的キャンペーン)の頻度が、猛烈に増えています。20世紀の5倍の頻度です。ところが、日本ではそうではない。日本は超例外です。どうしてなのか? このことと、クイズオタクの話とは何の関係もないと思うかもしれません。が、そうではないのです・・・ (講師・記)
大澤 真幸:社会学者 1958年生まれ。東京大学大学院社会学研究科博士課程修了。著書に『虚構の時代の果て』(ちくま新書)、『恋愛の不可能性について』(春秋社)、『電子メディア論―身体のメディア的変容』(新曜社)、『戦後の思想空間』(ちくま新書)、『<不気味なもの>の政治学』(新書館)、『ナショナリズム論の名著50』(平凡社)、『文明の内なる衝撃』(NHKブックス)、『自由を考える』(共著・NHKブックス)、『ナショナリズムの由来』(講談社)、『逆説の民主主義』(角川書店)、『不可能性の時代』(岩波書店)、『<自由>の条件』(講談社)など多数。 公式サイト http://osawa-masachi.com/
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