修善寺の大患以後、一年半ぶりの連載小説が『彼岸過迄』。冒頭で「短篇」を積み重ねて「長篇」小説にするという、明確な方法意識が宣言されている。同じ方法意識で書かれた『行人』『こころ』と共に後期三部作と位置づけられてきた。 帝国大学を卒業しても就職先が決まらない敬太郎を視点人物として、友人須永とその家に出入りする美しい女性との関係を探っていく<探偵小説>仕立てになっており、読者自身の想像力で人間関係の実相に迫っていくところに特質がある。(講師・記) ※2024年4月開講。25年3月に読了予定です。
小森 陽一:こもり・よういち 東京大学名誉教授 1953年生まれ。北海道大学大学院文学研究科修了。成城大学文学部助教授、東京大学助教授・教授を経て現職。著書に『構造としての語り』(新曜社)、『読むための理論 文学・思想・批評』(世織書房)『知の技法』(共著・東京大学出版会)、『ことばの力・平和の力 近代日本文学と日本国憲法』(かもがわ出版)、『難民(思考のフロンティア)』(共著・岩波書店)。『戦後日本は戦争をしてきた』(共著・角川書店)、『理不尽社会に言葉の力を』『戦争への想像力』『生きさせる思想−記憶の解析・生存の肯定』(新日本出版社)、『天皇の玉音放送』(朝日新聞出版)、『漱石論 21世紀を生き延びるために』(岩波書店) 、『東アジア歴史認識論争のメタヒストリー』(共著・青弓社)、『壊れゆく世界と時代の課題』(共著・岩波書店)などがある。
<テキスト>夏目漱石著『彼岸過迄』をご用意ください。講師は岩波文庫版をもとにします。
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