この講座では、フランスの哲学アンリ・ベルクソン(1859―1941)の四番目の、そして最後の主著となった『道徳と宗教の二源泉』(1932)を、一行ずつ丁寧に読み進めます。ベルクソンは、この著作のために二十五年の歳月を費やしました。この間、ヨーロッパでは酸鼻を極めた第一次大戦が起こり、一応の終結は見たものの、人類の未来に対する大きな不安と動揺が世界中に渦巻きました。この情勢に対し、ベルクソンは、自身の比類ない、<持続>の哲学をたずさえて立ち向かっています。私たちの道徳とは何か、宗教と呼ばれるもののほんとうの性質とは何か、結局のところ、人類はこれからも生き続けるに値するのか、そうであるなら、私たちのなかの何が、根本から立ち直らねばならないのか。この著作でベルクソンが、生のすべての力を傾けて答えようとした問いは、こうしたものです。ここにあるのは、ほかでもない現在の私たちが、いよいよさしせまって直面している問題ではないでしょうか。本書は、今、この時代にこそ、すみずみまで注意を払って熟読され、精神の食物とも、支えともされるべきものだと、私は信じています。受講に際しては、哲学の予備知識は、まったく不用です。 (講師・記) ※本講座は2024年1月に開講。じっくり読み進めます。 【各回のテーマ】(テーマは変更になる場合がございます。ご了承ください。) 1、魂が開かれているとは 2、魂に情動が生まれること 3、創造の力としての情動 4、魂の最も深くから来る情動 5、批判する知性と発明する知性 6、情動が言葉に結晶する
前田 英樹:批評家 1951年大阪生まれ。中央大学大学院文学研究科修了。2017年3月まで立教大学教授。主な著書に『沈黙するソシュール』(講談社学術文庫)、『定本 小林秀雄』(河出書房新社)、『セザンヌ画家のメチエ』(青土社)、『倫理という力』(講談社)、『独学の精神』(ちくま新書)、『絵画の二十世紀』(NHK出版)、『言葉と在るものの声』(青土社)、『宮本武蔵 剣と思想』(ちくま文庫)、『深さ、記号』(書肆山田)、『保田與重郎を知る』(新学社)、『日本人の信仰心』(筑摩選書)、『信徒 内村鑑三』(河出書房新社)、『民俗と民藝』『小津安二郎の喜び』(共に講談社)、批評の魂』(新潮社)、『愛読の方法』(ちくま新書)、『ベルクソン哲学の遺言』(岩波書店)、『剣の法』(筑摩書房)などがある。最新刊は『保田與重郎の文学』(新潮社)。
【テキスト】 アンリ・ベルクソン『道徳と宗教の二源泉』平山高次訳 岩波文庫 ※書店やインターネット、古書店等で各自、御入手ください。 ・本講座の配布資料はありません。
Vimeoを使用した、教室でもオンラインでも受講できる自由選択講座です(講師は教室)。見逃し配信(1週間限定)はマイページにアップします。各自ご確認ください。お問合せはasaculonline001@asahiculture.comで承ります。