『魏志倭人伝』には、景初二(三)年六月に倭女王卑弥呼の遣使が魏に朝貢し、数々の「好物」を下賜されて帰国したことが記されています。この「好物」のなかにある「銅鏡百枚」については戦前から三角縁神獣鏡が相当するとの考えがあり、邪馬台国の位置論にも波紋を投げかけ、戦後の発掘調査の激増と考古学研究の進展にともない論争を生んできました。今回の講座では、卑弥呼が下賜された「銅鏡百枚」について、戦後の三角縁神獣鏡論争の経緯と問題点、三角縁神獣鏡論の到達点、三角縁神獣鏡研究の新しい切り口と可能性などについて、三人の考古学者がそれぞれの立場から見解を披露します。 (寺沢講師記) 4月13日(土) 寺沢 薫(纒向学研究センター所長) 「銅鏡百枚」論の現在地」 5月11日(土) 福永伸哉(大阪大学大学院教授) 「銅鏡百枚」と三角縁神獣鏡論」 6月 8日(土) 水野敏典(奈良県立橿原考古学研究所) 「三角縁神獣鏡研究の最前線─3D計測から見えたもの─ 」 製作地や由来など、謎の多い三角縁神獣鏡ですが、3D計測という技術を用いて、検証し易い画像や断 面形で比較します。そこから導かれる製作技術の特徴と技術的な系譜を明らかにすることで、みえてきた 三角縁神獣鏡について、現在の研究を紹介します。
福永 伸哉: 大阪大学大学院文学研究科博士課程中退。大阪大学埋蔵文化財調査室助手、文学研究科助教授を経て、現在、大阪大学大学院文学研究科教授。博士(文学)。1996年第6回雄山閣考古学特別賞、2003年大阪大学共通教育賞、2006年第19回濱田青陵賞。著書に『三角縁神獣鏡の研究』(大阪大学出版会、2005年)、『邪馬台国から大和政権へ』(大阪大学出版会 2001年)など。
水野 敏典:奈良県立橿原考古学研究所 資料課長 1965年生。 早稲田大学文学研究科考古学専攻博士課程中退。古墳時代の青銅器と鉄製武器を中心に研究。青銅器研究では三次元計測を導入して、従来と異なる視点で研究を進めた。
教材としてプリントを配布する場合は、コピー代の実費をいただきます。
※設備費は教室維持費です。