スイスの北東部にあるザンクトガレンの南に広がる山岳地帯では、粋で誇り高い牧人魂が脈々と受け継がれています。牧夫たちが愛用してきた木製の美しい道具、身につける装飾品、刺しゅうを施した衣類などの手仕事に精魂をかたむける人々と、それらが使われている様子を、写真や映像で紹介します。 牧夫たちは夏の間アルプ(高地放牧地)の山小屋にこもり、チーズやバター作りに励んできました。使い込まれた木製の道具類は、秋にアルプから里に牛たちを降ろす行列の荷車に整然と積まれます。ミルク搾りに使っていた木桶には絵が描かれた底板をつけ、牧夫が肩に担ぎます。 さまざまな行事の折、牧夫たちは頭のてっぺんからつま先までアルプでの暮らしのモチーフが散りばめられた色鮮やかな晴れ着をまといます。片耳に下がる銀製のピアスは、生クリームをすくう木杓子の形、皮製のズボン吊りは牛のモチーフの真鍮細工で華やかに飾られています。 講座で紹介する工芸品は、吹田市の国立民族学博物館に納めてあります。(講師記)
岡部 由紀子:国際基督教大学卒業(文化人類学専攻)ウィーンにて、ドイツ語とヨーロッパ民俗学を学ぶ。国立民族学博物館(吹田市)のドイツ語文化圏の展示資料の収集に携わり、ヨーロッパ民俗文化、美術工芸の研究にあたる。『季刊民族学』などに報告を執筆。
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