この講座では英国の人気作家、ジェイン・オースティン(1775 – 1817)の『説得』(1818年)をとりあげます。オースティンが最後に完成させた小説で、死後に出版されました。 主人公のアン・エリオットは当時のヒロインとしては高齢の27歳であり、昔の恋人ウェントワスと再会しますが、彼はより若い、陽気な娘に惹かれている様子です。アンは准男爵の娘ですが、恋人は当時は海軍に入ったばかりで不安定な状況にあったため、周りに反対されてアンはウェントワースと別れてしまいました。そんなアンを彼は許していないようです。それでもずっと彼を忘れられないアンはウェントワースと無事に結ばれるのでしょうか。オースティンの初期の小説よりは落ち着いた雰囲気のある作品ですが、当時の社会、微妙な階級の差、夫婦のあり方、社交界の様子などがオースティンらしいユーモアと共に描かれています。あらすじや結末などにも触れますので、作品をあらかじめ読んでおくことをお勧めします。(講師記)
新井 潤美:あらい・めぐみ 東京大学大学院教授 東京大学大学院比較文学比較文化専攻博士号取得(学術博士)。東京大学大学院人文社会系研究科教授。専門はイギリス文学、イギリス文化、比較文学。主な著書に、『階級にとりつかれた人びと 英国ミドル・クラスの生活と意見』(2001)中公新書、『へそ曲がりの大英帝国』(2018)平凡社新書、『執事とメイドの裏表―イギリス文化における使用人のイメージ』(2011)白水社、『魅惑のヴィクトリア朝―アリスとホームズの英国文化』(2016)NHK出版、『パブリック・スクール―イギリス的紳士・淑女のつくられかた』(2016)岩波新書、『〈英国紳士〉の生態学―ことばから暮らしまで』(2020)講談社学術文庫、『ノブレス・オブリージュ―イギリスの上流階級』(2021)白水社、『英語の階級―執事は「上流の英語」を話すのか?』(2022)講談社選書メチエ。訳書に、ジェイン・オースティン著『ジェイン・オースティンの手紙』(2004)岩波文庫、他。
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