突然の訃報(ふほう)から8年をへても、デヴィッド・ボウイの名前は過去のものとはなっていません。ここ数年の間にも伝記その他の各種資料がつぎつぎと世に出ており、ボウイへの関心がいまだ衰えていないばかりか、その軌跡や遺産への評価がますます高まっています。 この講座では以下のようなボウイの変幻自在な生涯とその業績をたどります。 1.「デヴィッド・ボウイ」のできるまで 2.ジギー・スターダストのスターダム 3.現実への帰還:ベルリン三部作 4.時代のポップ・アイコンへ:「レッツ・ダンス」とMTV 5.さらなる前進:ティン・マシーン以降の実験性 6.演技者としてのボウイ:「地球に落ちて来た男」「戦場のメリー・クリスマス」「ラビリンス/魔王の迷宮」ほか。そして、このボウイの変遷の背後に一貫して流れるテーマを、社会学の「ポジショナリティ」という概念を参照して考察していきます。固定されたアイデンティティーを回避し、つねに時代と寄り添い、その「半歩先」を進みつづけたボウイの先進性と現代性を、改めて見直してみましょう。 画像: 『Heroes』 ©Sukita ©1977/1997 Risky Folio,lnc.Courtesy of the David Bowie Archive ™
長澤 唯史:椙山女学園大学教授 1963年静岡県生まれ。慶應義塾大学大学院文学研究科英米文学専攻修士課程修了。豊田工業高等専門学校助教授、椙山女学園大学文化情報学部助教授などを経て、2008年より椙山女学園大学国際コミュニケーション学部教授。共著『日米映像文学は戦争をどう見たか』(金星堂)。論文"The Reception of American Science Fiction in Japan" (Oxford research encyclopedia of Literature,)、「ポストモダンはSFを夢みる ―SFをめぐる批評理論の概観」(『文学』第8巻第4号)。その他、『文藝別冊』(河出書房新社)、『70年代ロックとアメリカの風景〜音楽で闘うということ』(椙山女学園大学研究叢書 49)にてロック、ポップミュージックに関する論考を発表している。