この講座は2023年12月18日に開講しました。録画を視聴できます。 かつて狗奴国は肥後熊本、菊池郡に所在するとみる説が有力でした。しかし1960年代に田辺省三先生によって狗奴国近江・東海説が提唱され、その後、赤塚次郎先生によって濃尾平野から北関東までに特異的に分布する前方後方墳や、S字状口縁甕の分布圏こそ、狗奴国の範囲を示すとの説が唱えられました。3世紀の近江系・東海系土器は北部九州でも点々と出土しており、狗奴国の対外交渉に関連する可能性が考えられます。 一方、狗奴国肥後説についても、山鹿市方保田東原遺跡や高森町・南阿蘇村の幅・都留遺跡のベンガラ生産遺跡の発掘で、新たな局面を迎えています。 本講座では、狗奴国東海説に主眼を置きながら、狗奴国肥後説の現状についても整理します。
桃ア 祐輔:福岡大学人文学部歴史学科教授 1967年(昭和42年)3月12日生まれ。福岡大学人文学部教授(考古学) 福岡県福岡市出身 筑波大学大学院歴史・人類学研究科文化人類学専攻を単位取得退学。東京国立博物館事務補佐員、筑波大学助手を経て2004年に福岡大学に着任。2018年に中国社会科学院考古研究所・吉林大学・西北大学で1年間の在外研究に従事。ユーラシア騎馬文化・中近世仏教考古学が専門で「中世とは何か」の解明をめざす。 主な著作に「高句麗太王陵出土瓦・馬具からみた好太王陵説の評価」(『海と考古学』2005)、「七支刀の金象嵌銘技術にみる中国尚方の影響」『文化財と技術 4』2005)、「中世棒状鉄素材に関する基礎的研究」(『七隈史学』第10号)、「九州の屯倉研究入門」(『還暦、還暦?、還暦!』2010)、「九州出土子持勾玉研究入門」(『福岡大学考古学論集2』2013)、桃崎祐輔「騎馬文化の拡散と農耕文明との融合−江上騎馬民族征服王朝説が描く文化融合モデルとその今日的意義−」(『今、騎馬民族説を見直す』2014)「山の神古墳出土馬具の検討―2セットのf字形鏡板付轡・扁円剣菱形杏葉の年代とその意義―」(『山の神古墳の研究』2015)「金属容器」(『モノと技術の古代史 金属編』2017)「英彦山信仰遺跡と遺物からみた英彦山の歴史」(『英彦山の宗教民俗と文化資源』2017)など