この講座は2023年11月20日に開講しました。録画を視聴いただきます。 220年に死去した曹操の墓からは、小札革綴甲冑が出土しました。この種の甲冑は、日本の3〜4世紀の古墳からも出土しますが、朝鮮半島ではごく少数しか見つからないため、中国文明圏から持ち込まれたと考えられています。橋本達也氏の研究を参考にこれらの分布図を作成すると、長野県・滋賀県・三重県を東限とし、福岡県を西限としており、大部分が畿内中枢部から見つかります。さらにその最古のグループは、いずれも画文帯神獣鏡や三角縁神獣鏡を共伴します。卑弥呼の鏡がどの鏡であったかは諸説ありますが、小札革綴甲冑は魏や西晋の製品が大部分を占め、邪馬台国への軍事援助時の下賜品を確実に含むと考えられるため、邪馬台国の所在地を考える上で最も重要な遺物であり、また邪馬台国と戦争していた狗奴国の所在地を絞り込む重要な手掛かりとなります。
桃ア 祐輔:福岡大学人文学部歴史学科教授 1967年(昭和42年)3月12日生まれ。福岡大学人文学部教授(考古学) 福岡県福岡市出身 筑波大学大学院歴史・人類学研究科文化人類学専攻を単位取得退学。東京国立博物館事務補佐員、筑波大学助手を経て2004年に福岡大学に着任。2018年に中国社会科学院考古研究所・吉林大学・西北大学で1年間の在外研究に従事。ユーラシア騎馬文化・中近世仏教考古学が専門で「中世とは何か」の解明をめざす。 主な著作に「高句麗太王陵出土瓦・馬具からみた好太王陵説の評価」(『海と考古学』2005)、「七支刀の金象嵌銘技術にみる中国尚方の影響」『文化財と技術 4』2005)、「中世棒状鉄素材に関する基礎的研究」(『七隈史学』第10号)、「九州の屯倉研究入門」(『還暦、還暦?、還暦!』2010)、「九州出土子持勾玉研究入門」(『福岡大学考古学論集2』2013)、桃崎祐輔「騎馬文化の拡散と農耕文明との融合−江上騎馬民族征服王朝説が描く文化融合モデルとその今日的意義−」(『今、騎馬民族説を見直す』2014)「山の神古墳出土馬具の検討―2セットのf字形鏡板付轡・扁円剣菱形杏葉の年代とその意義―」(『山の神古墳の研究』2015)「金属容器」(『モノと技術の古代史 金属編』2017)「英彦山信仰遺跡と遺物からみた英彦山の歴史」(『英彦山の宗教民俗と文化資源』2017)など