日本列島における古代国家の成立時期については、さまざまな説が提起されています。 かつては、7〜8世紀の律令国家を古代国家の成立と見る説が支配的な時期もありましたが、今日では、律令国家成立以前の古墳時代の5世紀の段階で初期国家が存在していたと見る説、さらには弥生時代から古墳時代への移行期、3世紀の段階ですでに国家が成立していたという説もあり、混迷を極めています。 このように乱立する学説について、かつて考古学者の都出比呂志氏は、「七五三論争」と称しました。たった三回の講座で、その論争に終止符を打つことはできないかもしれませんが、7世紀説・5世紀説・3世紀説は、それぞれ何を根拠にどのような古代国家像を描き出しているのでしょうか。 この講座では、この点について先行研究をわかりやすく紹介しながら、その根拠を検討していきたいと思います。 この講座が終わった後、受講の皆さんが、自分自身で魏志倭人伝や『日本書紀』にチャレンジする。あるいは奈良や大阪の巨大古墳を歩いてみようという気になったら、この講座の目的は達せられたことになります。(講師・記) 【カリキュラム】 第1回 3世紀の倭国 魏志倭人伝に登場するクニグニ、そして邪馬台国とは何か?倭国の政治構造は?近年の考古学的成果と照らし合わせて魏志倭人伝を読んでみましょう。 第2回 5世紀の倭国 5世紀は、世界遺産にも登録された百舌鳥・古市古墳群を始め、巨大な前方後円墳が形成された時期です。ではこのような古墳を造営することにはどのような意味があったのか。古墳を造営するだけの財力や労働力はどこから調達したのでしょうか。 第3回 7世紀 律令国家の成立前夜の時期に相当します。この時期、屋根を瓦で葺いた寺院が造営され、宮都が営まれるなどハード面で大きな変化が見られます。このような文明の構築物から浮かび上がってくる国家の本質とはどのようなものなのか。この点について考えてみましょう。
森田 喜久男:もりた・きくお 淑徳大学教授 1964年生まれ。東京都立大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得退学。博士(歴史学・駒澤大学)島根県古代文化センター、島根県立古代出雲歴史博物館を経て、淑徳大学人文学部教授。日本古代史・神話学・博物館学専攻。著書『日本古代の王権と山野河海』(吉川弘文館)、『やさしく学べる古事記講座』(ハーベスト出版)、『古代王権と出雲』(同成社)、『能登・加賀立国と地域社会』(同成社)他。
筆記用具
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