日本の探偵小説における不滅の金字塔ともいうべき横溝正史の傑作『犬神家の一族』。莫大な遺産相続をめぐって繰り広げられる犬神家の複雑かつ血みどろの人間模様。それを読み解くカギは「戸籍」にある。そもそも「犬神家」とは誰か?一族の血縁関係はどうなっているのか?横溝作品にはなぜ入り組んだ「家族」が多く登場するのか?そして日本人にとって戸籍とは何なのか?家、血、結婚、婚外子、戦争・・・と同作品にちりばめられた「近代日本」をめぐる様々なテーマを、戸籍を軸に読み直すことで物語のさらなる醍醐味とともに「日本」なるものが浮かび上がってくる。(講師:記) 第1回 「犬神家」とは何か? 作品の概要を見直した上で、まず戸籍を基に「犬神家の一族」の相関図を解明する。さらに物語の時代設定について、戦後の民法改正を踏まえて考察する。 第2回 犬神佐兵衛の戸籍 物語の最大のキーパーソン、犬神家の当主佐兵衛の謎に満ちた生涯について戸籍を切り口に解き明かしていく。 第3回 婚外子の運命 物語には松子・竹子・梅子の三姉妹をはじめ、多くの婚外子が登場する。日本社会において婚外子はいかに扱われてきたのか。そこから浮かび上がる日本の「家」とは? 【来期の予定】 第4回 犬神家の養子 『犬神家の一族』には様々な「養子」が登場するのも興味深い。日本の養子制度の特徴を考えることでまた家制度の本質がみえてくる。 第5回 犬神家と戦争 この物語の背景には戦争が深く結びついている。ここでは戦争と戸籍の関係を探ることで、物語の核心に迫る。 第6回 横溝家の戸籍 作者の横溝正史も犬神家に負けず劣らず複雑な家に育った。横溝家の相関図を洗い直すことで横溝作品の世界のユニークさがより明らかになる。 【参考図書】遠藤 正敬著[『犬神家の戸籍 「血」と「家」の近代日本』](http://www.seidosha.co.jp/book/index.php?id=3609)(青土社、2021)
遠藤 正敬:えんどう・まさたか 1972年千葉県生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科博士課程修了。博士(政治学)。早稲田大学台湾研究所非常勤次席研究員。早稲田大学、宇都宮大学等非常勤講師。専攻は政治学、日本政治史。著書に『犬神家の戸籍−「血」と「家」の近代日本』(青土社、2021)、『天皇と戸籍−「日本」を映す鏡』(筑摩選書、2019)、『戸籍と無戸籍−「日本人」の輪郭』(人文書院、2017)、『戸籍と国籍の近現代史−民族・血統・日本人』(明石書店、2013)等。
筆記用具
・Zoomウェビナーを使用した、教室でもオンラインでも受講できる自由選択講座です(講師は教室)。見逃し配信(1週間限定)はマイページにアップします。各自ご確認ください。お問合せはasaculonline001@asahiculture.comで承ります。 ・教室は変わる場合があります。当日の案内表示をご確認ください。