「稀代の軍師」、「忠義の名臣」、「有能な官僚」…蜀漢の丞相・諸葛孔明と言えば、多くの優れた才能を持つ『三国志』の英雄として、現代の日本でも知られた存在です。しかし、そうした姿が史実をそのまま伝えたものであるかは、疑わしいとされています。諸葛亮に関する古い歴史書の記録は真偽不明の記事を多く含み、『三国志演義』を始めとする映画やドラマの中の諸葛孔明のイメージはこうしたエピソードと信頼できる記事とをつなぎ合わせる形で、整理・再解釈して長い期間を経て徐々に形成されたものでした。英雄としての諸葛亮像はいかにして、どのような目的で創造されたのでしょうか。この講座では、中国哲学史・儒教思想を専攻する研究者が、中国における歴史を解釈する文化について解説しながら、諸葛亮伝説の形成と展開をお話しします。
福谷 彬:京都大学人間環境学研究科准教授 1987年東京都生まれ。京都大学博士(文学)。北京大学高級進修生、日本学術振興会特別研究員、京都大学人文科学研究所附属東アジア人文情報学研究センター助教を経て、現在は京都大学人間環境学研究科准教授。主著に『南宋道学の展開』(2019年、京都大学学術出版会)。
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