「源氏物語」作者の紫式部には、子ども時代に父親との屈折した親子関係があって、それを受け止めなければならなかったことにまつわる有名なエピソードが残っています。当時の女性にはめずらしく、同じ中流受領階層の友人と心通わし合う思春期があったことも、わかっています。その後、父親の地方官赴任に伴った一年あまりの越前での暮らしがあって、帰京後すぐに結婚し、翌年には子どもに恵まれたものの、結婚3年目に夫は亡くなってしまいました。そうした前半生が、その後「源氏物語」の作者として世間に認められていく紫式部の心に、どのような光と影を投げかけていたのかを探ります。
福嶋 昭治:園田学園女子大学名誉教授 1948年生。大阪大学大学院文学研究科修士課程修了。著書に『物語文学の系譜』『光源氏が見た京都』『源氏物語カルチャー講座』『紫式部と越前武生』など。
※設備費は、教室維持費です。