邪馬台国三国志の構図に立って、北部九州に存在することがほぼ確実な奴国や伊都国をはじめとする諸国の立ち位置を見ると、邪馬台国連合・初期ヤマト政権の有力な構成体とする通説に見直しが必要となります。 伊都国・奴国をはじめとする北部九州の3世紀の土器を見ると、畿内系以外にも、大量の山陰系土器、少量だが東海・近江系の土器が持ち込まれており、筑紫は、「出雲国」の重要な交渉相手であり、「狗奴国」とも独自交渉していた可能性が高いと考えられます。福岡市西新町遺跡や箱崎遺跡など、山陰・東海系の土器を出土する遺跡は、中国鏡や水銀朱などの中国文物、朝鮮半島三韓の鉄資源を求め、外部権威に依存していた「出雲連合」「狗奴連合」にとっても、対外交渉の生命線であり、筑紫諸国は列島内の諸国連合を秤にかけて漁夫の利を得たと考えるのが自然です。 しかし313年に楽浪・帯方郡が滅び、316年に西晋が滅ぶと、出雲国王や狗奴国王の権威が動揺して連合が弱体化し、このタイミングを捉えてヤマト政権が「出雲国」「狗奴国」を制圧し、これによって筑紫の自立性も終焉を迎え、西新町遺跡の国際埠頭が廃止され、ヤマト政権が宗像沖ノ島−金海ルートを独占するシナリオが想定されるのです。
桃ア 祐輔:福岡大学人文学部歴史学科教授 1967年(昭和42年)3月12日生まれ。福岡大学人文学部教授(考古学) 福岡県福岡市出身 筑波大学大学院歴史・人類学研究科文化人類学専攻を単位取得退学。東京国立博物館事務補佐員、筑波大学助手を経て2004年に福岡大学に着任。2018年に中国社会科学院考古研究所・吉林大学・西北大学で1年間の在外研究に従事。ユーラシア騎馬文化・中近世仏教考古学が専門で「中世とは何か」の解明をめざす。 主な著作に「高句麗太王陵出土瓦・馬具からみた好太王陵説の評価」(『海と考古学』2005)、「七支刀の金象嵌銘技術にみる中国尚方の影響」『文化財と技術 4』2005)、「中世棒状鉄素材に関する基礎的研究」(『七隈史学』第10号)、「九州の屯倉研究入門」(『還暦、還暦?、還暦!』2010)、「九州出土子持勾玉研究入門」(『福岡大学考古学論集2』2013)、桃崎祐輔「騎馬文化の拡散と農耕文明との融合−江上騎馬民族征服王朝説が描く文化融合モデルとその今日的意義−」(『今、騎馬民族説を見直す』2014)「山の神古墳出土馬具の検討―2セットのf字形鏡板付轡・扁円剣菱形杏葉の年代とその意義―」(『山の神古墳の研究』2015)「金属容器」(『モノと技術の古代史 金属編』2017)「英彦山信仰遺跡と遺物からみた英彦山の歴史」(『英彦山の宗教民俗と文化資源』2017)など
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