『古事記』や『日本書紀』には、大和朝廷とは別個に、出雲勢力に関する記述が大きく取り上げられ、天孫降臨以前に倭国の主導勢力であったかのような記述がなされています。出雲は、四隅突出形墳という特殊な形の王墓が主流で、楽浪系の木槨木棺を埋葬施設とする一方、3世紀に遡る初期の前方後円墳がなく、初期ヤマト政権には参加していなかったとみられています。4世紀後半になってようやく前方後円墳が築造されるようになるものの、むしろ前方後方墳の存在が目立つという特殊な地域です。同様な傾向は、北陸地方まで続いているため、日本海沿岸航路で結ばれた一大政治連合体があったと考えられます。この地域はまた、碧玉やメノウ、水晶や翡翠などの鉱物資源が豊かであり、王権と玉の交易との密接な関係も考えられます。この講座では、出雲・越連合を考古学的成果から考えます。
桃ア 祐輔:福岡大学人文学部歴史学科教授 1967年(昭和42年)3月12日生まれ。福岡大学人文学部教授(考古学) 福岡県福岡市出身 筑波大学大学院歴史・人類学研究科文化人類学専攻を単位取得退学。東京国立博物館事務補佐員、筑波大学助手を経て2004年に福岡大学に着任。2018年に中国社会科学院考古研究所・吉林大学・西北大学で1年間の在外研究に従事。ユーラシア騎馬文化・中近世仏教考古学が専門で「中世とは何か」の解明をめざす。 主な著作に「高句麗太王陵出土瓦・馬具からみた好太王陵説の評価」(『海と考古学』2005)、「七支刀の金象嵌銘技術にみる中国尚方の影響」『文化財と技術 4』2005)、「中世棒状鉄素材に関する基礎的研究」(『七隈史学』第10号)、「九州の屯倉研究入門」(『還暦、還暦?、還暦!』2010)、「九州出土子持勾玉研究入門」(『福岡大学考古学論集2』2013)、桃崎祐輔「騎馬文化の拡散と農耕文明との融合−江上騎馬民族征服王朝説が描く文化融合モデルとその今日的意義−」(『今、騎馬民族説を見直す』2014)「山の神古墳出土馬具の検討―2セットのf字形鏡板付轡・扁円剣菱形杏葉の年代とその意義―」(『山の神古墳の研究』2015)「金属容器」(『モノと技術の古代史 金属編』2017)「英彦山信仰遺跡と遺物からみた英彦山の歴史」(『英彦山の宗教民俗と文化資源』2017)など
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