〈ケアの倫理〉とは家事、育児、介護だけに限定されない。それは一つの正義を掲げ、声を上げる〈正義の倫理〉の対抗原理としても理解されている。ただ、そういう倫理だからこそ、消極性や自己犠牲を助長すると誤解されてもいる。ケアの倫理は、立場や個々の経験によって口をつぐんでしまうこともある、そういう個々の脆弱性について理解を深めるものである。ケアを担う人たちは必ずしも嬉々として自己犠牲になるわけではなく、そこには激しい葛藤がある。文学には、ケアを実践し他者と共に生きる人たちが生き生きと描かれている。シェイクスピアなどの古典のみならず、 SF小説・映画や韓国小説や日本文学などから〈ケア〉を読み解いてみたい。 ★当日、教室では書籍販売とサイン会を行います。
小川 公代:英文学者 1972年、和歌山生まれ。上智大学外国語学部教授。ケンブリッジ大学政治社会学部卒業。グラスゴー大学博士課程修了(Ph. D.)。専門は、ロマン主義文学、および医学史。著書に、『翔ぶ女たち』『ケアの倫理とエンパワメント』『ケアする惑星』(いずれも講談社)、『世界文学をケアで読み解く』(朝日新聞出版)、『ゴシックと身体 ──想像力と解放の英文学』(松柏社)、『文学とアダプテーション──ヨーロッパの文化的変容』『文学とアダプテーション2──ヨーロッパの古典を読む』(ともに共編、春風社)、『感受性とジェンダー──〈共感〉の文化と近現代ヨーロッパ』(共編、水声社)、『ジェイン・ オースティン研究の今』(共著、彩流社)、訳書に、シャーロット・ジョーンズ『エアスイミング』(幻戯書房)、サンダー・L・ギルマン『肥満男子の身体表象』(共訳、 法政大学出版局)などがある。
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