『先代旧事本紀』(せんだいくじほんぎ)は、平安時代のはじめ、830年ごろにできたとみられる。物部氏(もののべし)の家記(家の記録)といえるものである。『先代旧事本紀』は神武天皇よりも前に、物部氏の祖・饒速日の尊(にぎはやのみこと)が畿内へ東遷降臨したことをややくわしく伝える。そのことを支持するような考古学的事実もある。あるいは、これは北九州にあった邪馬台国本体の東遷伝承ではないか。日本古代史の再建のため、『先代旧事本紀』全文を冒頭から注意深く読んでいく。なお、『先代旧事本紀』の序文には、『先代旧事本紀』は、聖徳太子と蘇我馬子(いずれも、7世紀前半ごろまで活躍した人物)が編纂したと記されている。そのため、江戸時代以降、偽書であるとの説もあらわれた。「序文」は、後代の付加として疑うべきである。しかし、本文には『古事記』『日本書紀』にはみられない、古伝とみられる記述や、古い用字法などもみられる。また、9世紀前半ごろまでに成立した史書の数は、それほど多くはない。平安時代初期には、存在していた文献であるので、貴重な価値をもつことはたしかである。 今期も、引き続き、巻10「国造本紀」を読み進めます。(講師・記) ※2012年4月開講。 ※授業開始20分前程から受講者による発表(テーマ自由)を行います。(希望者のみ)
安本 美典:元産業能率大学教授・日本古代史学者 1934年旧満洲に生まれる。京都大学文学部卒業。日本古代史学者。元産業能率大学教授。文学博士。『季刊邪馬台国』編集顧問。主な著書:『神武東遷』(中公新書)、『卑弥呼の謎』(講談社現代新書)、『邪馬台国への道』(筑摩書房)、『巨大古墳の被葬者は誰か』『応神天皇の秘密』(以上、廣済堂出版)、『日本誕生記(T、U)』(PHP研究所)、『データサイエンスが解く邪馬台国 北部九州説はゆるがない』(朝日新書)、勉誠出版から『古代物部氏と「先代旧事本紀」の謎』『日本神話120の謎』『大和朝廷の起源』『「邪馬台国畿内説」徹底批判』など古代学シリーズを刊行中。
・テキスト:大野七三 校訂編集『先代旧事本紀』訓註(批評社)お持ちの方はご持参ください。 ・コピー教材を実費にて販売します。
・授業開始20分前より受講生による発表(テーマ自由、希望者のみ参加)があります。 ・教室は変わる場合があります。10階と11階の変更もあります。当日の案内表示をご確認ください。